東西南北中央不敗

 『武侠映画の快楽―唐の時代からハリウッドまで剣士たちの凄技に迫る』という本があります。十月に出たばかりの本ですが、その本の詳しい内容やら評価やらはうっちゃって、ある章で思わず笑ってしまったのでその章を抜粋してみる。

第三章 武侠体質短期練成講座
東方不敗がポピュラー・キャラになる日
 (前略)こうして香港映画を色々追いかけているうちに気がついたら浴びるように武侠映画を観ていたという流れで日本の香港映画ファンに知られるようになった作品の一つに『スウォーズマン 女神伝説の章』という映画がある。
 話は飛ぶが、04年秋の東京国際映画祭。『青春愛人事件』と言うタイトルの中国映画が上映された。劇中、「東方不敗」と名乗る人物の出てくるシーンがある。そのとき、場内にくすくす笑いの波が立った。
 会場に居合わせた中国人記者にとって、それはちょっとした驚きだったらしい。翌日ないしは翌々日、中国のニュースサイトの娯楽版に『青春恋愛事件』上映時に関する記事が載り、「意外なことに、東方不敗を知っている日本人観客が何人もいた」と言う趣旨の言及があったと記憶する。
 この「東方不敗」こそは『スウォーズマン 女神伝説の章』に登場する人気キャラクター(もっと正確にいえば、映画の原作である金庸の『笑傲江湖』に登場するキャラクター)であり、香港武侠映画史上トップスリーに入ろうかというほどの(個人的にはベストワンに選出したい)魅力的悪役だ。
 『スウォーズマン 女神伝説の章』もしくは原作小説を知らない人には何のことやらさっぱり…なはずのシーンでかなりの観客が反応したことは、それだけ日本でも(少なくとも中国語映画ファンの間で)この映画や小説が知られていることを意味する。(後略)

 「スウォーズマン」や金庸の原作の知名度を否定するわけではありませんし、ネタ元であるということも重々承知ですが、東京国際映画祭で笑った人たちの多くはおそらく、東方不敗東方不敗でも、流派東方不敗マスターアジアに反応したと思うのですよ。武侠映画の発展を願う著者お二人には残念でしょうが。
     
左が東方不敗マスターアジア、右が『スウォーズマン 女神伝説の章』の東方不敗

参考:東方不敗 - 武侠Wiki - Seesaa Wiki(ウィキ)