羅列


魔王」 ☆☆☆
この人の著作は初めて読むが、文章は嫌いではない。のだが、作中に起きる出来事や人物の行動がテンプレ(有り体に言えば右傾化する日本)をなぞっているだけに感じられて楽しめなかった。後半は社会関係の情報が減少するので、さほど気にならなくなったが。またこの兄弟に特殊能力を持たせる必要がいまひとつ理解できない。それらはあくまで話しを回す為のガジェットなのだろうが、それならこの場合無くても大丈夫なのではと感じた。


All You Need Is Kill (スーパーダッシュ文庫)」 ☆☆★
こういう言い方もアレだが、悪い意味で二次創作的。別にパクリ云々を言うつもりではなく、取り入れた要素を消化――昇華でもいいが――し切れていない感を覚える。ストーリー自体も特筆するべきものはない。分量的に上・下巻くらいでループの描写を増やした方がいいかな、とも思った。面白くないわけではないんだが。


地を穿つ魔 <タイタス・クロウ・サーガ> (創元推理文庫)」 ☆☆☆
途中までは楽しめたが、主人公タイタス・クロウとその友人アンリがウィルマース・ファウンデーション接触する辺りから急に楽しめなくなった。過程を端折り過ぎ。終わり方も終わり方であるし、シリーズの第一巻であることを考えて今後に期待、と言う所か。今の所、短・中篇を集めた「タイタス・クロウの事件簿 (創元推理文庫)」を上回るものではない。あと本編には直接関係ないのだが、笹川吉春氏による解説の一文、「クトゥルー神話による現実の伝奇化」と、その例えとして挙げられた一連の設定の魅力は認めざるを得ない←駄目人間


酒の話 (講談社現代新書)」 ☆☆☆☆
もう20年以上も前の本だが、中々面白かった。著者は現在、東京農大教授、日本発酵機構余呉研究所所長、国立民族学博物館共同研究員を務めている。この本が出たのが82年の話しだから、ちょうど東京農大の教授に就任した年か。歴史・民族的側面からと科学的側面の両面から酒について書かれており、入門書にはちょうどいいかと。個人的には大師河原の酒合戦あたりについての話が興味深かった。こんどはもう少し新しい著作を読もうか。