『ティム・バートンのコープス・ブライド』




正しくナイトメアー・ビフォア・クリスマスの正当進化系といった塩梅。スクリーンの細部にまで凝った美しい映像は、最早当然とでも言うべき域に達しており、何度でも見たいと思わせる出来。そういう意味ではストーリー自体は特に見るべきものは無い(細かい場面における小粋な演出や台詞回しは別)が、それが別段問題になっていない。
 キャラクター造形は一場面にしか登場シーンがないものでさえ、魅力的に造られており、どうと言うことはない俯瞰のシーンでさえ、楽しめるものとなっている。ただし悪役・やられ役としてのキャラクターを背負わされたバーキス・ビターンは除く。立場的に仕方がないとは言え、少しも魅力を感じない。せいぜいが執事の引き立て役である。悪役の魅力すらないのでやられた際の爽快感もない。
 全場面通して、巧い、と感じたシーンはピアノシーン全般か。その中でも主人公であるビクター・バン・ドートとその結婚相手であるビクトリア・エバーグロットが初めて出会うシーンが白眉。それまで結婚相手の顔も知らず、二の足を踏んでいた二人が打ち解ける作用をよく表している。この作用は、ビクターとコープス・ブライドとの間にも使われているが、やはり初見のインパクトのせいか、ビクトリアとのそれには及ばないように感じられた。
 またどうも不自然に感じられたシーンが一つ。地下の死者の国に連れて行かれて戸惑っていたビクターが、骸骨犬であるスクラップスを送られた途端、完全に馴染んでしまうのは如何なものか。あとスクラップスがかつてのビクターの愛犬というのは映画見てるだけじゃ分らないと思うんだがどうだろう。
 あと冒頭から出てきていた蝶がどこか画面から浮いているように思えていたので、ラストのアレはどうも微妙。